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パネルディスカッション「明るい未来と社会実装のために」
1月29日、東京ビッグサイトで開かれたエネルギーイノベーション総合展で、パネルディスカッション「フュージョンエネルギーがもたらす明るい未来と社会実装するために必要なこと」を開催しました。文部科学省・内閣府や会員企業のパネリストが、究極の次世代エネルギーをめぐる現状と将来をめぐって活発に意見を交わしました。

「太陽の力」と「富士山」で明るい未来を
セッション1では、J-Fusion会長企業の京都フュージョニアリング株式会社の執行役員経営企画本部長である中原大輔氏が、「太陽」と「富士山」をキーワードにして、「J-Fusionとは何か」と題して講演しました。
中原氏は、核融合によるエネルギーを「太陽の力」と表現し、ゼロカーボンであり地球温暖化の「究極のソリューションになりうる」と位置づけました。さらに「原理的には、燃料を海水からとりだせるので枯渇がない」と、既存のエネルギーに対する優位性を強調しました。

J-Fusionは2024年3月の設立後、1年足らずで会員が84団体(1月15日現在)に増え、国内外で積極的に活動しています。会員企業は製造業をはじめ、建設、化学、通信、金融、商社など幅広い分野から集まっており、中原氏は「フュージョンエネルギー産業は、すでにスタートしている」と明言しました。さらに「将来、自動車産業のような巨大な産業になる」と予測。その実現のために、さらに多様な分野の産業やアカデミアがかかわる必要があるとして、フュージョンエネルギーの将来像を、広大なすそ野をもつ「富士山」にたとえました。
中原氏は、世界をリードする技術力だけでなく、「すり合わせ」に秀でている点が「日本の強みだ」と語り、「フュージョンエネルギーはまさに、すり合わせ産業といえる」と定義しました。さらに、海外では産業化への競争が激しくなっており、「アメリカではすでに数千億円のスタートアップ企業が生まれた。中国でも1000億円から数千億円の大規模プロジェクトが始まっている」と現状を紹介しました。こうしたエネルギー覇権をめぐる国際競争を念頭に「明るい未来のために、皆さんの力を得て、この競争を勝ち抜いていきたい」と協力を呼びかけました。


「オールジャパン」で次世代の「エネルギー立国」へ
セッション2のパネルディスカッションは、滋賀大学経済学部の後藤良介准教授がモデレーターをつとめ、5人のパネリストが登壇しました。
文科省と内閣府で核融合を担当する山崎久路氏は、ロシアによるウクライナ侵略後のエネルギー情勢の変化でエネルギー安全保障が重要な課題になったとする「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略」を2023年に日本政府が策定したことを紹介。「可能なかぎり、産業界を支援していく。将来、核融合にかかわる企業が増えれば人材が不足すると予測しており、人材育成が非常に重要な課題になる」と国の認識を表明しました。
IHI技術開発本部の袖子田竜也氏は、フランスで建設中の核融合実験炉ITER向けに世界最大級の「超臨界圧ヘリウム循環ポンプ」などを製造した実績を踏まえ、「日本は核融合をめぐる優れた技術を持ちながら、連携してまとめあげる『オールジャパン』の場が今までなかった。J-Fusionは日本企業の力をつなげていくために非常に重要」と、J-Fusionに参加するメリットを語りました。
株式会社Helical Fusion代表取締役CEOの田口昂哉氏(J-Fusion副会長)は、自社が日本生まれの「ヘリカル式」で核融合炉を開発するスタートアップ企業であると紹介。「社会実装のために国内外の大企業や政府と話しているが、日本は研究開発の水準は世界トップと自信を持っていい。また、『ものづくり』は間違いなく世界トップだ。われわれが一体となって、今アクセルを踏みこめば、次世代の『エネルギー立国』を実現できる」と強調しました。
日揮株式会社の吉田英爾氏はエンジニアの立場から、「核融合炉はボイラーのようなもの。燃料供給などの面で、プラントに強い私たちの知見を生かせる」と期待を語りました。また、国際競争について「米国や英国、中国が先行しかけているが、今こそ日本人をやる気にさせる絶好の機会。技術力を結集し、一気に抜き返すマインドセットが必要」と述べました。
株式会社MORESCOの林義和氏は、福島原発の廃炉作業でデブリ(溶融燃料)取り出しロボットにつかわれている耐放射線性潤滑剤を開発した経験をもとに、核融合の安全性について「もし地震が起きてもスイッチを切れば、核融合炉は瞬時に止まる。原子力のような暴走の危険がない」と話しました。そのうえで「良い意味で、とがった技術を持つ会社はぜひJ-Fusionに入会を」と参加者に呼びかけました。
セッション1
中原大輔
京都フュージョニアリング株式会社 経営企画本部 執行役員経営企画本部長
一般社団法人フュージョンエネルギー産業協議会 実行委員長
セッション2
<モデレーター>
後藤 良介
滋賀大学経済学部 准教授
<パネリスト>
吉田 英爾
日揮株式会社 インダストリーソリューション本部 原子力プロジェクト部 部長
田口 昂哉
株式会社Helical Fusion 共同創業者 代表取締役CEO
林 義和
株式会社 MORESCO 研究開発部 高度専門職(課長級)/ 耐放射線性潤滑剤
袖子田 竜也
株式会社 IHI 技術開発本部 技術基盤センター 物理・化学技術部 主幹
山崎 久路
文部科学省 研究開発局 戦略官(核融合・原子力国際協力担当)付 課長補佐
内閣府 科学技術・イノベーション推進事務局参事官(統合戦略担当)付 参事官補佐(フュージョンエネルギー担当)
一般社団法人フュージョンエネルギー産業協議会 事務局
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